「ハイビジョン放送に求める映像」 SNAKER

 

 はじめにハイビジョンとは何かということについて述べる。従来のテレビより、画質の高めたテレビの方式を高品位テレビと呼ぶ。ハイビジョンは、その中のひとつである。従来のテレビ方式は、走査線が525本であった。これに対してハイビジョンは走査線の数は、1,125本となっており従来の方式の約2倍となっている。また画面の縦横比も異なっており、従来のテレビは43であったが、ハイビジョンは169となっている。これによりハイビジョンはより画面が鮮明で、よりワイドで臨場感ある画像が楽しめる。

テレビ放送は、194150年にかけ欧州諸国が各方式で本格サービスに入り日本では、195321日にNTSC 方式で開局して以来、半世紀を経過した。その間、映像はモノクロ放送からカラー放送へ、音声はモノラルからステレオ・多重音声へ、伝送路は地上波にケーブルと衛星が加わるという進化をしてきた。近年、AV を取巻く環境は、通信やメディアが既にデジタル化され、コンピュータやインターネットの普及、および情報処理技術の発展により、通信と放送の融合にデジタル映像が求められている。

当時、ハイビジョンもアナログ信号を使って映像を送る「アナログハイビジョン」であった。しかしその後、デジタル映像処理の技術が発展すると共に、撮影装置および編集装置に、少しずつデジタル映像処理が使われるようになり、すべてをデジタル化した「デジタルハイビジョン」が登場した。これからハイビジョン放送に求められる映像として、デジタル映像の現状と動向について述べようと思う。

 ここで、デジタル信号を使って放送するメリットについて述べる。音声や映像のほかに、静止画像や文字情報を含むデータを伝送できる。また、伝送系での劣化がなく、放送局品質が、そのまま視聴者の画像品質となる。他にもデジタル化されたコンテンツの相互活用が容易である等が挙げられる。そしてデジタル信号の最大の利点は、電波資源の有効活用である。アナログ信号に比べて、データ圧縮の容易であるデジタル信号は、アナログ放送1ch分の伝送帯域で36ch分の映像が伝送できる。そのため種々の映像圧縮方法が考えられてきた。映像や音声データの圧縮方式の規格にMPEGと言うものがある。MPEG-1CD等への動画像ならびに音声データの蓄積を目的として制定されたマルチメディア符号化方式であり、ビデオCDやテレビ電話、テレビ会議に使われている。動画と音声合わせて1.5Mbit/秒程度のデータ転送速度が想定されている。尚、画質はVHSのビデオ並みである。MPEG-2はデジタル放送やDVDでの動画像ならびに音声データの蓄積を目的として制定されたマルチメディア符号化方式である。現在のデジタルテレビ放送やDVDなどで利用されている。動画と音声合わせて415Mbit/秒程度のデータ転送速度で、S-VHSのビデオ程度の画質である。また、デジタルハイビジョンにも対応している。なお、MPEG-3はデジタルハイビジョン信号の符号化方式として検討されたが、MPEG-2の画質が十分なものだったために、消滅して現在は存在しない。MPEG-4は動画像を十数kbit/秒から数十Mbit/秒の幅広いビットレートで圧縮可能な方式を採用しており、画質はそれほどでもないが圧縮優先の方式である。モバイル端末やテレビ電話で今後利用が広まると期待されている。

最近では日立製作所中央研究所でMPEG-7準拠の映像検索技術の開発が発表された。MPEG-1MPEG-2 MPEG-4が映像・音声データの圧縮方式に関する標準規格であるのに対し、MPEG-7は音声や画像、映像などの各マルチメディア・コンテンツについて、検索時の照合に用いるためのデータの記述方式を制定しようとするものである。MPEG-7は、ISO/IECが現在策定中のマルチメディア・コンテンツの内容記述方式に関する国際標準規格であり、画像内容を検索できるものである。例えば、スポーツの試合映像の中から、得点を決めるシーンだけを検索できるようになる。今回、開発された技術は、検索精度を保持しながら検索に必要なデータの蓄積コストや検索時間を大幅に低減することが可能だという。この技術は、放送局などにおける大規模なデジタルアーカイブシステムから民生用ホームビデオサーバに至るまで、大量のデジタル映像の検索に応用可能である。

 ハイビジョン放送は、受信者であるユーザーにデジタル映像ならでは高画質、高音質なサービスはもちろん、データ放送などの便利さ、楽しさが求められる.またハード面でも、誰でも容易に使うことができる機器を目指し、ヒューマンインタフェースの開発に力を入れる必要があるだろうと考えられる。今後、それぞれの機器には、ケーブルや無線、あるいはメモリカードにより機器間で相互に情報をやりとりできるホームネットワーク機能が搭載され、家庭の機器同士はもちろん外部のネットワークにも自由につながり、多様な双方向サービスが可能になると予想されている。

 以上ハイビジョン放送について、求められる映像としてデジタル映像の現状と動向について述べた。今後、放送が多様化すると共に楽しみ方も多様化していくと考えられる。

 

 

以上